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社会福祉法人大阪福祉事業財団 高鷲学園 若林康一さん no.209

今月の人
子どもたちを家庭に迎えてみませんか? 施設も里親に寄り添い、子どもの成長を一緒に支え続けます
社会福祉法人大阪福祉事業財団 高鷲学園
里親支援専門相談員 若林康一さん  里親リクルーター 中川 瞳さん 宮岡佳奈さん
里親支援専門相談員 若林康一さん  里親リクルーター	中川  瞳さん 宮岡佳奈さん

人の子どもが暮らす高鷲学園
羽曳野市内で里親を募集中

 

 子どもたちは社会全体にとっての宝—。次の時代をつくっていく、大切な大切な存在だ。しかし今、さまざまな事情によって親と一緒に暮らせない子どもたちが増え、その数は全国で約4万5000人にものぼるという。子どもの総人口は約1553万人だから、約0・29%、およそ1000人に3人の子どもが家庭で暮らすことが難しい状況にあるというのが日本の現状だ。

 では、その子どもたちはどこで暮らしているのだろう。おもに児童養護施設や乳児院などだ。今回、近鉄「恵我ノ荘」駅から南へ徒歩6分のところにある児童養護施設「高鷲学園」を訪れた。高鷲学園がここ羽曳野市に設立されたのは1946年。70年以上にわたって、この地で多くの子どもたちの成長を支えてきた。

「現在は82人の子どもたちが、期間は様々ですが、ここで生活をしています」と、高鷲学園で働く里親支援専門相談員の若林康一さん。現在、大阪には児童養護施設が38ヵ所、乳児院が8ヵ所あり、そこで計約3000人の子どもたちが生活をしているという。

「子どもたちが家庭で暮らすのが難しい場合、公的責任において社会的に子どもたちを養育しようという考え方を〝社会的養育〟といいます。子どもの最善の利益のために、社会全体でこどもを育むことです」

 その具体的な方法の一つが、高鷲学園のような児童養護施設が子どもたちの暮らしの場となり、一人ひとりの成長を支えていくこと。そして、もう一つが里親制度など、家庭養育とよばれるものだ。

 しかし、日本では里親委託率は18・3%と低く、ほとんどの子どもたちが児童養護施設で暮らす。ちなみに、オーストラリアの里親委託率は93・5%、アメリカは77%、イギリスは71%だという。

「施設では多くの職員やさまざまな専門職の方が子どもたちにかかわりを持ちながら成長を支えていますが、集団生活のルールが元にあるので、個人個人に合わせてきめ細かく対応することが難しい場面もあります。一方、家庭養育では、一緒にその日の晩ごはんを決めたり、行きたかった公園に出かけたり……など、一人ひとりの子どもと柔軟に向き合うことができます。また、特定の大人と一対一の関係を築くことができ、子どもの安心感にもつながりやすいというのも特徴です」

 海外では里親委託の割合のほうが圧倒的に多いが、日本ではまだまだその割合は低い。「日本では里親に孤立感があるという状況がしばしば言われ、そしてそれは子どもの不安感にもつながってしまいます。いま、私たちは『with里親』という事業を展開していますが、これは、子どもたち、里親登録してくださった方、そして高鷲学園が、みんな顔見知りでお互いに安心でき、気軽に相談できる関係を目指すというものです。遠方のご家庭ではなく距離の近い羽曳野市内のご家庭に限定させていただくことで、子どもには親しみのある地域で暮らせる安心感が生まれます。また、登録してくださった方にはすぐに子どもたちとの長期の生活をお願いするのではなく、事前にいろいろなかたちで子どもたちと交流する機会をつくり、お互いに知り合える機会をつくります。そして施設はその後もずっと里親さんに寄り添いながら、継続してサポートしていくという取り組みです。より開けた柔軟な活動を展開していくことで、幅広い里親候補の方々との出会いがあれば……と期待しています」

 

地域に里親家庭が増えれば
子育てがしやすい町になる

 

 家に子どもを受け入れたいが、何をどうしたらいいのかわからないという受け入れ側の不安ももちろんあるが、子どもたちにとってもどんな家に預けられるのかというのは大きな心配だ。そのために重要になるのがマッチング。若林さんは、「登録したいという方には、登録に向けたステップを一緒に丁寧に踏んでいきます。細やかにヒアリングをしながら、子どもにとっても里親さんにとってもよい出会いになるよう、私たちがしっかり寄り添い続けます」と話す。

 また、この『with里親』には、「はぐくみホーム」と「週末里親」という2種類のかかわり方がある。「はぐくみホーム」は子どもを一定期間受け入れる里親家庭(養育里親)、「週末里親」は月に数回または長期休みの際などに子どもを家庭に迎え入れる家庭を指す。

「羽曳野市では現在、はぐくみホームとして2家庭が実際に子どもを受け入れてくださっています。この数が少しずつ増え、いつか10〜15家庭になれば、地域の中で子育てをつないでいけるのではないかと期待しているんです。子育てというのは、思うほど簡単ではありません。頼れる人がそばにいないという人も増えています。高鷲学園が里親家庭をしっかりと支え続け、その里親家庭がいずれは地域の子育てにおけるセミプロのような存在となっていけば、子育て中の誰にとっても頼れる存在になれるかもしれません」

 諸々の思いや条件が合致し、週末里親家庭とマッチングした子どもは、里親と過ごす週末を非常に楽しみにしているという。「ずっと集団で生活している子どもにとって、個別のかかわりを体験できる貴重な時間です。多くの子どもたちがそんな時間を過ごせるよう、ぜひ羽曳野市内の方からご連絡をいただけたら嬉しいですね」

 はぐくみホームや週末里親になるには、どんな条件が必要なのだろうか。「特別な資格は必要ありません。少し時間はかかっても地域で支え合いながら、地域の子どもたちを地域で育てていくことができれば虐待を防ぐ地域をつくっていけると感じています。独身の方や共働きのご家庭でも大丈夫ですので、お気軽に問い合わせください。羽曳野市外の方は地域の市役所などにぜひ問い合わせをしてみてください」

 実際に里親となった人からは「苦労も多いけれど大きくなって顔を見せにきてくれて、今はこんなふうに頑張っているという話をしてもらえることが大きな喜び」といった声が届く。若林さんは「私は職員として、子どもたちがしんどい話を打ち明けてくれた時にやりがいを感じます」と話す。地域で『with里親』の広報活動を担う里親リクルーターの中川瞳さんは「子どもたちが私の姿を見かけて話しかけてきてくれるとうれしいですね」と言う。同じく里親リクルーターの宮岡佳奈さんは「地域の多くの店舗がリーフレットを快く置いてくださいます。地域ぐるみで子どもたちを育てるという空気が少しずつ生まれていったらいいなと感じます」

 子どもへの関わり方は多様にある。もし、自分にも何かできることがあるのでは?と感じられたら、今年は少しでも行動に移してみる。そんな1年を目指したいものだ。

 

(取材・文  松岡理絵)

 

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