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デリ&ダイニング「ペコハウス」店主 中井美奈子さん no.219

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“もう一つのおうち”のようなダイニング 体にやさしい家庭料理は予約制デリでもどうぞ
デリ&ダイニング「ペコハウス」店主
中井美奈子さん
1967年、松原市生まれ。羽曳野市在住。調理師。「ワイン会」「日本酒の会」など、“飽きない”商いを心掛けてお店を営む。二人の実の娘は成人するが、「ペコキッズ」ほかお店にやってくる“子どもたち”の成長が楽しみだと話す。
中井美奈子さん

無農薬や減農薬の野菜を丁寧に下ごしらえして調理

 

 近鉄南大阪線「高鷲」駅を降りて、徒歩約8分。大津神社を越え、住宅と商店が軒を連ねる一角にデリ&ダイニング「ペコハウス」の看板が見えてくる。

 扉を開ければ、カウンター6席とボックス席1つ、10人で満席になるアットホームな空間。にっこりと優しい笑顔で迎えてくれたのは店主の中井美奈子さんだ。店名にある「ペコ」とは、中井さんの子ども時代からのあだ名だという。その〝ペコちゃん〟こと中野さんが2012年に自宅一階部分のガレージを改装して店舗にしたのがこのお店。ノンジャンルの家庭料理とおいしいビールが揃う、〝もう一つのおうち〟のようなダイニングだ。

「オープン時は45歳。それまで会社員だったのですが、定年のない仕事をしたいと考え始め、以前から得意だった料理を生涯の仕事にしようと決めました」

 以来7年間、このお店のキッチンを切り盛りし、多くのお客さんを迎えてきた。「食べるもので体はできているから」と顔の見える契約農家からの野菜も使い、調味料もできるだけ手作りにこだわる。「今日は〝ペコちゃんのおうちに食べに来た〟というリラックスした気持ちでご飯を食べに来てもらえたらうれしいですね。私は〝いらっしゃいませ〟の言葉に、〝おかえりなさい〟の気持ちを込めています」

 当初はランチ、ディナー、そして手作りのお惣菜の量り売りも行っていたが、お総菜の販売はどうしても売れずに残ってしまう量があり、その食品ロスに心を痛めていた。「それに、毎朝の仕込みから始まり、ランチ、デリ、ディナーと、オーバーワークにもなっていたことから、5周年を機に私なりの〝働き方改革〟をし、ランチとデリは予約制にさせていただくことにしました」

 すると食品ロスも減り、ホッと心が安らいだ。また、時間にも余裕ができ、生産者から届く新鮮な野菜をさらに丁寧に下ごしらえし、さらに手を加えて調理できるようになった。

 お惣菜の販売はもともとは近隣に暮らす子育て中の女性たちの力になれれば……という思いから始めたもので、今でも予約が入れば夕食の助けになるようなメニューを完全オーダーメイドで考える。「苦手な食材やアレルギー、どのようなシチュエーションで何人で召し上がるのかをお聞きするのはもちろんですが、昨日の食卓と重ならないように昨日食べたものをお聞きしたりもします。サラダに和え物、煮物など、〝おかあちゃんの実家〟から持って帰るみたいな感覚でお持ち帰りしてもらえたら」

 働く主婦やママたちの集まり、一人暮らしの人など、さまざまな人に喜ばれているというのも頷ける。また、ランチは2名から予約可能で貸し切り制。「授乳期の子どもをもつママたちには刺激の少ない優しい味付けを意識しますし、ランチとお酒を楽しみたいという女性グループにはワインやビールに合うメニューを考えます。職場の遅いお昼休みに合わせて13時半スタートで……というご相談にも対応。できるかぎりご要望に沿わせていただいています」。そこまで対応してもらえて、お茶とデザート付きで1500円からという価格設定にも「料理で喜んでもらいたい」というサービス精神がうかがえる。

 

 

ワインや日本酒も豊富。クラフトビールはお手頃価格

 

 

 ひと手間かけた手作りの料理は、その日の黒板メニューのほかにも、「こんなの食べたいんですけど」と相談すると材料がある限りは対応してもらえる。ワイン、日本酒、ビールほか、ドリンク類も豊富だ。とりわけビールは「おいしく飲んでもらいたい」と、泡がきめ細かく出るよう丁寧に注ぐのはもちろん、7リットルの樽を必ず3日で空け、新鮮な状態のものしか出さない。サーバーなど機器の掃除やメンテナンスも徹底、メーカーによる最高水準の「S基準」の認定も受けた。それにより、販売店が限定される「一番搾りプレミアム」も提供、クラフト生ビールも南河内ではいち早く取り扱い始めた。

「立地もよいわけではないなかで、お客さまのおかげで7年もやってこられたことに感謝の気持ちでいっぱいです。また、地域全体が活気づくといいなと思っているので、高鷲駅周辺のほかの飲食店さんと協力し合って、一緒にイベントを企画したり、チラシを置いて宣伝し合うなどしています」

 〝食〟にかかわる仕事に就いたのは、「食を大切にする家で育ったことが大きいように思います」と中井さん。「春になると祖母と一緒に豆の皮をむいたり、節分になると台所には寿司酢の香りが漂ったり。それに毎食後は必ず急須と茶葉でお茶を淹れて飲んでいました。だから今も、私生活でもお店でも〝お茶〟でのおもてなしが欠かせないんです」

 ちなみに取材時には、バタフライピーというタイのお茶を出してくださった。レモンを加えることで、時間とともに酸と反応して、濃い紺色が薄い紫色へと色が変化していくという見た目にも楽しめるお茶だ。「お茶だけでも会話が弾むきっかけになりますし、お酒を飲みすぎた方には胃腸に優しいお茶をお出しするなど、出すお茶を考えるのも楽しみなんです」

 料理への大きな一歩となったのは、中井さんの長女が子どもの頃に「料理をしたい」と言い出したこと。近くに子ども向けの料理教室がなく、それならばと自分で料理教室「ペコハウス」をスタート。近所の子どもたちも参加し、「次女が小学校を卒業する年まで10年間続きました」。

 そして再び、デリ&ダイニング「ペコハウス」でも子ども向けの教室を月1回開催し始めて7年。今や、口コミで近隣エリアからも子どもたちがやって来る。1月は和菓子とお抹茶、9月はおはぎとお茶……と、季節感を取り入れながらお菓子を作ったり、お茶の淹れ方を教えたり。子どもたち自身に意見を出し合ってもらうことで、協調性や自己表現力を磨く機会にもなればと考えている。「ここに通ってくれている子が運動会を見に来てと言ってくれたので、見に行ってきたんです!」と話す嬉しそうな表情からも、子どもたちへの温かい思いが垣間見える。また、以前、近隣で子ども食堂が運営されていることを知り、「食の仕事をしている者の一人として何かできることがあれば」と、開催日にはお惣菜の差し入れを続けていた。

 そんな中井さんが切り盛りする「ペコハウス」には、独身だった男性が彼女を連れてきてくれたり、結婚式に呼んでくれたり、生まれた子どもを連れてきてくれたり……ということもある。

「食を通してつながって、人生の節目にかかわれるなんて幸せです。この場を続けたいので、体力が落ちてくる60代には少し業態を変えて『ペコBar』を始めたい。死ぬまでお店を続けて、みんなのおかんでありたいと思っています(笑)」

(ライター  松岡理絵)

 

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