KANMURYOU Furniture&LIFEcollection+CAFÉ 代表 田中 浩嗣さん no.221
10年前からバリへ自ら買い付けに
2階建ての広い店舗に家具も展示
堺羽曳野線の道路沿い、スッキリと白い壁にガラス戸を施したおしゃれな建物が目に入飛び込んでくる。ここは「KANMURYOU Furniture & LIFEcollection+CAFÉ」。広々とした二階建ての倉庫をリノベーションし、その開放感いっぱいの空間にインドネシア・バリ島から届く雑貨から大型家具までをたっぷりとディスプレイしたインテリアショップだ。
「藤井寺からこちらへ移転して、早7年目。最初はものすごく小さな店舗で始めたので、並べたいと思っていた商品も並べられませんでした。ですが、こちらへ移ってからは、もともと取り組みたかった家具を多数並べることができ、雑貨やファッションアイテムと合わせてインテリアのトータルプロデュースを行えるようになりました」
お店をするなら、暮らしに欠かせない家具を多く取り揃えたい——。それは、代表の田中浩嗣さんの夢の一つだった。今、テーブルセットからチェスト、本棚などの家具が並ぶほか、大小さまざまなキリンの木彫り、食器、アクセサリーなど、洗練されたアジアン雑貨もにぎやかに店内を彩る。
「すべてバリ島からの直輸入です。バリには手作りの良いものが今なおたくさん残っているので」と田中さん。商社を挟むことなく、10年前から田中さん自らがバリ島を訪れ、直接買い付けを行っているという。「言葉ですか? 英語とインドネシア語と日本語をそれぞれカタコトで……。そしてジェスチャーです(笑)。とにかく現地でしっかりとコミュニケーションを取って、自分の目で見て日本のお客さんに紹介したいと思ったもの、そして信頼できると感じた現地の職人さんが作ったものを日本へと持ち帰っています」
じつは田中さんの祖父母は、河南町で竹細工の職人をしていたという。「ですので僕も生まれた時から祖父母が手作業で竹のかんごを作っているのを見て育ちました。だから自然と東南アジアの手仕事に興味をもつようになって、大人になってからは旅行でよく訪れるようになりました」。ある時、バリを訪れた田中さんは竹細工でできた筆箱をお土産に買って帰った。すると、普段は田中さんの持ち物にあまり興味を示さない祖父が、「これはうまいこと作ってるなあ」とその筆箱に見入って感激していたという。「その祖父の様子を見て、南河内とアジアがつながったような気がしました。そして、そういった手作りの温みのある工芸品や雑貨がバリにはまだまだ残っていて、竹細工の村や木彫りの村もある。どこかでつながっているそんな文化をお店を通して伝えていきたい。そんな思いで、バリ雑貨や家具を扱い始めました」
シダ科のつる性植物・アタで作るティーマットは、独特の光沢が美しく上質感のあるバリの人気工芸品の一つだ。「これはアタを天日干しする工程も含め、職人が手間暇かけて作っているもの。現地の工房を訪れて職人さんとも話をしているので、どのように作られているのかを日本のお客さんに伝えることができます」
また、細かなドットで描いたアートも人気商品の一つだという。「これは僕と同世代のアーティストの作品。自宅にアトリエがあって、そこでこの絵が描かれているんですけど、僕が発注をしに訪れると、いつもファミリーで歓迎してくれて……。彼の作品がお店で売れれば、また発注しに行くことができる。そう思うと、お客さんに手に取ってもらえるよう、この作品の魅力をしっかり伝えていかなくちゃという気持ちが湧いてきますね」
そして、この店舗に移転以来、田中さんがもっとも力を注いでいるのがオーダー家具だ。「ここに展示している家具をご覧になっていただいてイメージが固まってきたら、サイズや細部のデザインを一緒に詰めていき、バリ島の家具職人に発注し、それを直輸入しています」
オーダー家具は逐一画像で確認OK
サイズも仕様も細かく注文可能
主に使われるのは、温かみあふれるチークの無垢材。無垢材の家具が部屋に一つあるだけで、どこかホッと落ち着けるのは木の持つ力だろうか。家具は、部屋の置き場所に合わせたぴったりサイズを発注できるのはもちろん、裏の板にコンセント穴が欲しいとか、この部分を数センチ単位でへこませてほしいなど、細かいところまで希望も聞いてもらえるのがうれしい。「こんなのがほしいというのが実現するのがオーダー家具ですから、どんな小さな希望も遠慮なく伝えてもらえたら。新居を建てられた方から、トータルコーディネートを任せていただくこともあります」
昔は、船で運ばれてきてコンテナを開けるまではどのような仕上がりになっているのかが分からないという不安がつきものだったというが、今はスマホで細かくやりとりできる時代。画像を逐一送ってもらえるので、各段階でイメージのすり合わせも細やかに行えるという。「バリにいる職人の顔も見ていただけますし、家具がどんな工程を経て完成するのかということをリアルタイムで共有させていただけるので、実物が届く前にすでに愛着が湧いたとか、届くのが本当にワクワクするという感想をいただくことも多いですね」
そして、オーダー手数料は特に上乗せしないといい、「さらに値段は〝羽曳野価格〟なので大阪市内で買うよりは結構お手頃だと思います(笑)」と田中さんは胸を張る。
「年に数回、店舗内で『PASAR(パサール)』というイベントを開催してるのですが、インドネシア語で『市場』という意味です。地域の手作り作家さんやショップさん、いろいろな活動をされてる方々が出展してくださり、楽しく賑やかで、僕も毎回楽しみにしてるんです」 また、妻の文子さんが担当していた併設カフェは、現在育児休業ということでクローズ中。カフェで働いていた経験や、野菜ソムリエ資格ももつ文子さんが作るイチジクタルトが評判で、再開を待ちかねている地元ファンも多い。「来年のイチヂクの時期には再オープンしたいと思っています」というから楽しみだ。
実は田中さんは、河南町のイチジク農家の三代目でもある。「今はまだ二代目の父母ががんばってくれていますが、いずれは僕たちがしっかり味を継いでいかなくてはと考えています。二足のワラジは大変だと思いますが、〝本当に美味しいイチジクを作りたい〟という気持ちは家族みんな一緒なので、子どもも巻き込んでやっていきます(笑)」 この南河内とバリ島の工房をつないでいる「KANMURYOU」。訪れたらぜひ田中さんに商品の背景を尋ねてみてほしい。手にした商品がさらに愛しくなるはずだ。
(ライター 松岡理絵)
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