ツタワルフードサークル タフクリエイト株式会社 COO 箱崎好徳さん no.230
イメージは〝飲食のフリマ〟
大手サイトより使いやすいと好評
2020年、思いがけず始まり、拡大したコロナ禍は私たちの日常生活のあり方を大きく変えた。その一つが、外食だ。3密を避けるという感染予防対策が行われる中で、近所の行きつけのお店にも食事に行きにくくなったという人も多いのではないだろうか。
「知り合いの店主さんたちと話していると、これからどうやって仕事を維持していったらいいのかと悩んでいる人が本当に多かったんです。僕自身も居酒屋を経営していたので切実な問題でした。そんな中で、できることは何かないかとずっと考えていたんです」
そう話してくれるのは、藤井寺で居酒屋「鶏と創作お台所 OHAKO」を営む箱崎好徳さんだ。「お店に来てくださるお客さんはもちろん減りましたし、テイクアウトというのもなかなかうまくいきません。大手の出前注文サイトは手数料も高いですし、登録申請をしてから認可されるまで期間もかかってしまう。そんな時に、OHAKOのお客さんでもあった津田和淳一さんと、〝飲食のフリマ〟という発想で地域の飲食店と地域の人をつなぐサイトを立ち上げられないかという話になったんです」
そうして生まれたのが、藤井寺密着の出前注文サイト「ツタワルフードサークル」だ。津田和さんは以前から産業機械の「売りたい」「買いたい」をマッチングさせるためにウェブサイトを立ち上げ、運用していた。「昔は、買いたい人から声がかかれば売りたい人を探す、売りたい人から声がかかれば買いたい人を探す、という作業を一つひとつこなしていたのですが、それでは時間もかかるし手数料も高くなってしまう。もっとユーザーの方々に便利な方法はないかなと考えて作ったのが、メルカリのように自由に産業機械を売り買いできるサイトでした。新型コロナが収まらない中、地元の飲食店が大変だという箱崎さんの話を聞いているうちに、そのサイトのシステムを少し修正すれば、飲食店用に使えるんじゃないかなと思ったんです」
箱崎さんも津田和さんも藤井寺在住。だからこそ、地域の人たちが使いやすくて便利なサービスを提供したいという思いが湧いてきたのだという。そうして、地域密着型の〝飲食のフリマ〟を立ち上げるために動き始めたのがこの春のことだった。「困っている飲食店も多いため、できるだけ手早く準備を進め、6月13日にウェブサイトの運用を開始しました。『実店舗に加えて、2店舗目のお店をウェブ上に開きませんか?』と地域の飲食店さんにお声がけをさせてもらい、手を挙げてくれた10店舗からのスタートでした。保健所の認可は受けているかなど基本的な審査をさせてもらったのちに登録。掲載料は無料です。注文があった場合のみ、売り上げの20%をいただくという仕組みで、大手の出前注文サイトよりとても使いやすいと言っていただいています」
配達員は土地勘ある地元の人たち
女性宅にはできるだけ女性が対応
9月15日時点で、サイト上には藤井寺の飲食店が32店舗掲載されている。それぞれウェブ上で注文できるメニューが表示されるので、利用者は希望のメニューを選択し、ウェブ上で注文を行う。お店によって、宅配も店頭受け取りも可能だ。宅配の場合は、注文が完了すると配達員がお店に出向き、登録した住所までお料理を届けてくれる。
ウーバーイーツと異なり、「ツタワルフードサークル」でデリバリーを担当するのは直接雇用している社員やアルバイト。だから責任の所在も明確だ。
「地元密着型の注文サイトなので、スタッフもみんな藤井寺に暮らしている人。ですから、基本的な土地感覚はありますし、細い道やわかりにくい場所などは普段から情報を社内で共有するようにしています。また、一人暮らしだと思われる女性からの注文の場合、できるだけ女性の配達員が対応するようにしています」
大手サイトでは、デリバリースタッフが藤井寺にいない場合もあるという。しかし、ツタワルフードサークルでは事務所自体が藤井寺にあるため、注文が入ったらすぐにお店へ商品をピックアップしに行くことができる。「時間通りに料理を準備して渡すことができるため、飲食店さんからもスムーズで助かるという声をいただいています。また、お客さんと飲食店と我々運営側がLINEでやりとりができる仕組みを作り、万が一何か問題が発生した場合でも運営側もリアルタイムで対応できるようにしています」
今ではこのサービスを藤井寺に定着させるために奔走する箱崎さんが、ここ藤井寺に居酒屋をオープンしたのは7年前。「当時はうちの子どもも小さかったのですが、子ども連れで気兼ねなく食事に行けるお店が藤井寺には少なかったんですよ。そして、それをとっても残念に思っていたんです。だからここでお店を開くことになった時、家族で気軽に食事をしに来てもらえるお店にしようというのは、最初から考えていたことでした」
そうして地域の人たちとのコミュニケーションを大切にしながらお店を続け、家族連れはもちろん、ママ友会なども行われる人気店となった。その同じ思いを、このツタワルフードサークルにも傾けているという。
「コロナ禍でもできること、コロナ禍だからこそできることを考えていきたい。気になっていたけれど一人では入りにくかったお店も、デリバリーなら気軽に注文することができるというお客さんからの声も届き、そんな活用の仕方もあるのかと大きな気づきになりました。また、飲食店の方には、実店舗は閉めてデリバリー専門でがんばるという選択肢もあります。お客さんも飲食店も、このツタワルフードサークルを存分に活用してくれたら、うれしいですね」
藤井寺地域でこの仕組みが根付けば、南河内の各市町村でも拠点を作り、それぞれ地域のお店と地域の人がつながれる同じ仕組みを展開していきたいと、津田和さんと箱崎さんは夢を語る。「地域の飲食店がつながることでネットワークが生まれ、そこからまた何か新しいことができるかもしれません。そして将来的には、飲食店だけでなく、たとえば特製ドレッシングや特性ジャムなど、地元のおいしいものを全国に向けて販売できるサイトにも育てていけたらいいなと思っています」
(ライター 松岡理絵)
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