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やさい劇場 店主 寺田 賀代后さん no.236

今月の人
野菜が主役のユニークな八百屋〝やさい劇場〟。 懸命に野菜を育てている小さな農家さんを応援したい
やさい劇場 店主
寺田 賀代后さん
1990年、枚方市生まれ。松原市在住。二児を育てながら畑を回る日々。趣味は“仕事”。 ※店舗情報は、上段をご参照ください。
寺田 賀代后さん

生産者さんの思いがこもった野菜を
決して安売りしない

 

 大きな一粒が宝石のような存在感のイチゴ、葉が重ね合わさり丸々とした白菜、肉厚で見るだけでも旨みいっぱいのマイタケ……。一つひとつの野菜や果物が「私を見て!」と言わんばかりに賑やかに並んでいる。ここは大阪中央環状線沿い、松原市大堀にある喫茶店跡をDIYした八百屋さん。その名も「やさい劇場」。この空間は、野菜たちが〝主役〟の、野菜のための〝舞台〟なのだ。

「スーパーに比べるとここで販売しているお野菜は2〜3割ほど高いと思われる方もいるかもしれませんが、どれも生産者の方々が丁寧に育てたおいしい野菜ですから、これが適正価格だと思っています」と店主の寺田賀代后さんはきっぱりと言う。

「これは、農家の窪田さんが徹底した温度管理をして甘みを凝縮させたミニトマトなんですよ」と、どんな生産者さんがどんなふうにして育てたのかを聞かせてくれる。それぞれの野菜にまつわる生産者さんの思いや手間暇を知ると、野菜への愛しさが増し、この値段も安く感じられるほどだ。

 寺田さんがこの「やさい劇場」を運営する会社「ベジくるむ」を立ち上げたのは2016年。南河内や泉州の野菜を大阪市内の飲食店に納品する野菜の仲卸としてスタートした。

 そもそも、寺田さんと野菜との関係はもっと前へとさかのぼる。「20歳ぐらいの頃、美容に興味があって、美容に関することをいろいろと調べては実践していたんです。きれいになりたいという気持ちから野菜のことを深く知るうちに、バターナッツやロマネスコなど個性的だったり芸術的だったりする野菜ともたくさん出合って、野菜に恋をしてしまって……(笑)」

 それからは、いつか野菜に関わる仕事を自分で始めるために、野菜を多く使っているカフェでアルバイトをしたり卸売市場で働いたりと、大好きな野菜について学びながら仕事を続けた。「飲食店で働いたことで、どんな野菜が好まれるかということもわかりましたし、市場で働いたことで流通のことも勉強できました。また、長野県の枝豆農家さんのところで働かせて頂いた時には生産者さんの想像以上の大変さも知り、こんなに大変な思いをして野菜を育てているのに安く買いたたかれてしまうことに疑問が湧きました。そこから、もっと生産者さんを応援したいという気持ちが強くなったんです」

 

選び抜いた野菜の詰め合わせ
ベジふるギフトが大好評

 

 そうして、妊娠中でもあった16年にいよいよ事業をスタート。市場で働いていた時の人脈を活かしながら、農家さんを回って仕入れ先を確保し、そして納品先の飲食店も増やしていった。「私が一緒にお仕事をさせていただきたいと思うのは、一生懸命に農業に従事しているけれどまだまだ軌道に乗っていない小規模の農家さん。いいものを作ってらっしゃる方、とっても多いんですよ。そんな生産者さんを応援したいんです」

 南河内や泉州のおいしい野菜を、大阪市内の飲食店へ配達する—。そうした仲卸をしながら、小売店「やさい劇場」を20年4月5日にオープンした。「でも、その2日後に緊急事態宣言が発令されてしまって……。タイミングは悪かったけれど、それでも野菜の魅力をきちんと伝える場としてここを設けて、一般の方々へお野菜をお渡しできる方法が一つ増えたのはとても嬉しいことです」

 緊急事態宣言が出されたことで、飲食店はもとより、仲卸業者や生産者は出荷数が激減、大きなダメージを受けた。そんな中で、大阪市で飲食店を営む有志たちが「仲卸業者や生産者を応援しよう」と野菜を仕入れ、店頭で野菜を販売するなど応援してくれたという。「飲食店さんたちの支えはとても心強かった。同時に私も、もっと生産者さんたちを応援していきたいという気持ちが強くなりました」

 そして今、力を入れているのが「ベジふるギフト」。野菜や果物をギフトとして送ろうというプロジェクトだ。以前、つき合いのある飲食店へのお祝いに、新鮮でカラフルな野菜を箱につめて贈ったところ、「ものすごくうれしい!」ととても喜ばれたという。それを機にギフトに力を入れ始めた。「一つひとつの野菜を大事に育てた農家さんの思いと、贈り主の思い。その二つが合わさる世界に一つだけのギフトです。木箱に大切に詰め込んで、お祝いの気持ちをお届けしています」

 食品のギフトは世の中にすでにたくさんあるが、既成の商品のパッキングではなく、その時々の旬のもの、〝野菜オタク〟を自称する寺田さんが選び抜いたものが、贈るタイミングで一つひとつ詰め合わされる。お中元やお歳暮、お誕生日祝い、出産祝いなど、さまざまなシチュエーションを色とりどりの野菜たちで祝えるとあって、早くも人気を呼んでいる。

「野菜で利益が出て、小さな農家さんたちが安心して野菜を育てていける仕組みができたらいいなと思うんです。野菜はいつも低価格競争に巻き込まれがちですが、それでは生産者さんたちの経営も安定しませんし、回りまわって、私たち一人ひとりの消費者にも不利益なことになります。安心・安全な野菜を安定的に供給してもらえる仕組みを、いろいろと考えていきたい。その一つが、ベジふるギフトでもあるんです」

 野菜の仲卸業と小売業に加え、マルシェに出展したり学校で講師を務めるなど食育にも力を注いでいる。

「さまざまな活動を通じて、野菜の魅力を発信していきたい。そうして多くの方に野菜を1つでも2つでも手に取って頂けたら、また農家さんに発注することができます。ギフトを受け取った人から『素敵な贈り物をありがとう』とお礼が届いたり、お野菜を納品したお店さんから『おいしかったよ』と言っていただいたりすると、うれしくてさらにモチベーションが上がります。これからもいろいろなチャレンジをしながら、野菜が回る仕組みを考え、生産者さんが安心して作物を育てられる環境を応援していきたいと思っています」

 生産者と消費者を熱い思いを持ってつないでくれている寺田さん。野菜のその向こうにある風景を、私たちももっと目を凝らして見ていきませんか。

(ライター  松岡理絵)

 

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