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笑ノ百姓 中塚和典さん・菜津美さん no.239

今月の人
野菜を通じ、日常にささやかな微笑みを届けたい。目指すのは小さくともオンリーワンの農家
笑ノ百姓
中塚和典さん・菜津美さん
■中塚和典さん 1982年、大阪市生まれ。大阪狭山市在住。趣味も農業。 ■中塚菜津美さん 1983年、広島県生まれ。大阪狭山市在住。料理が得意。
中塚和典さん・菜津美さん

農薬と化学肥料を使わず野菜作り
会社員を経て、ゼロから新規就農

 

 富田林市錦織、国道170号線からわき道を少し入ったところに広がる畑で、農薬や化学肥料を使わずに野菜を作っているのが、夫婦二人で営む「笑ノ百姓」(えみのひゃくしょう)。今年で就農3年目。すでにたくさんのファンを持ち、旬の採れたて野菜を南河内に届け続けている。

 夫の中塚和典さんはもともと栄養士。病院で調理の仕事に就いたのち、お米の配達業を経て農家へと転身した。「高校生の頃から飲食店でアルバイトをしていたのですが、ある時そのお店のお味噌汁を任されて、それがすごく自分に合ってると感じて楽しかった。その時にぼんやりとですが、料理の道に進みたいという目標ができて、その前にまずは知識をつけようと思い、栄養士の資格を取るために専門学校に通ったんです。その後は結果的に栄養士として10年ほど働きました」

 そこから農業の道へ進むきっかけとなったのは、会社員をしながら楽しみとして続けていた家庭菜園だった。「無農薬で育てたコマツナを食べたら、予想以上に美味しくて感動したんです」

 その時ふと、「これを仕事にできたら素晴らしいだろうな」という思いがよぎった。妻の菜津美さんに恐る恐るその思いをぶつけてみたところ、「いいんちゃう?」とあっさりと同意してくれたという。「子どもはまだ幼稚園。不安定な生活になってしまうかもしれないのに、背中を押してくれてありがたかったです」

 農家になる—。そんなビジョンを描き始めた中塚さんは、2017年にJAが主催する農業研修に申し込み、会社員をしながら休日を利用して1年半通うことにした。その研修が終わる頃、熱意が伝わり、教える側として参加していた農家さんから「本気で農業をする気があるなら、地主さんを紹介してあげるよ」と声をかけられ、二つ返事で「お願いします!」と答えた。そして借り受けたのが、錦織にある現在の畑だ。会社員を続けながら、休日を利用してトラクターに乗り、土を耕した。「そして19年4月に会社を辞めて、5月から専業農家としての一歩を踏み出しました。実家が農家というわけでもなく、まったくゼロからの新規就農でしたが、いろいろな方が応援してくれたおかげで農家になれました」

 会社員から農家へ。生活のリズムに戸惑わなかっただろうか。「会社員時代は残業も多くて、子どもたちと触れ合う時間がとても少なく、今のほうが断然家族と一緒の時間も増えました。農家は日が沈むまでしか働けませんからね」。菜津美さんも「以前は事務関係の仕事をしていました。今は太陽の下で身体を動かす仕事。とても気持ちいいんですよね」と農業を楽しんでいる。

 最初は3〜4品目と少ない種類から挑戦したが、どれもなかなか育たず苦労したという。「研修時は土がしっかりできている畑を使わせてもらっていましたが、農業を始めるにあたってお借りした土地はそうではなくて。だから、土を改良するところからのスタートで、3年目の今もまだその途中ではありますね。今もきちんと育つのは、まだ4〜5割ぐらいです」

 屋号は「笑ノ百姓」。ユニークな屋号だが、そこにはどういう思いを込めたのだろうか。「自分が野菜を作っている時もそうなんですが、大きな笑いというよりも、ちょっとニコっとするぐらいのささやかな微笑みを野菜を通じて日常に届けられたら……と。また、〝百姓〟という言葉は農業を生業とする前から使いたかった言葉。百の姓って、百の引き出し、百の技術をもっている人という意味があり、百の技術を駆使しながら野菜を作る、そんな農家でありたくて」

 笑ノ百姓が作る野菜は、どれも農薬や化学肥料を使っていない。家庭菜園時代からそうして作った野菜の味を美味しく感じていたからだ。「もちろん除草剤も使いませんから、これからの時期は草抜きだけでも大仕事です。でも、やればやるだけ作物は応えてくれます。のめり込むと休みもなくなるんですが、好きなことを仕事にしているので、逆に毎日が休みだという気持ちにもなりますね。365連勤だけど、365連休のような(笑)。そうやってこだわって育てた野菜を誰かが買ってくださり、おいしいと言って食べてもらえると本当にうれしいです」

 

野菜セットを直接配達
「おいしい」の声が励みになる

 

 当初は、地域の直売所などに出荷していたが、無農薬でどんなに手間暇をかけて育てた野菜であっても他の農家さんたちの出荷物の中に埋もれてしまい、価格もそこに引きずられてしまうことが残念だったという。「時間をかけて価値ある商品を作っても、適正な価格で評価されなくなってしまうんです。そんな時、妻がSNSでうちの野菜について発信をしてくれて、笑ノ百姓が作る野菜に価値を見出だしてくださる方々に直接野菜を届けることができるようになりました」

 少しずつ評判が広がり始め、「うちの店の前で販売をやってくれへんか?」と声がかかり、南河内のカフェやレストランなどの店頭で「軒先マルシェ」という名の直売を定期的に開始。「農家の思いを伝えながら新鮮な野菜をお渡しできる機会で、とてもありがたいです。イベントへの出店も話しながら野菜をお渡しできるので積極的に参加していたのですが、今は残念ながらコロナ禍で……」。しかし、個人宅への宅配は増え、生産者と消費者の顔の見える関係は続けている。

 高齢で田畑を維持するのが難しいという農家さんから託される土地も増え、現在1・5ヘクタールの畑に、年間を通して150品目ほどを育てている。「細かく分けるとそれぐらいの種類になりますね。大根だけでも4〜5種です。個人宅へお届けする野菜セットはだいたい8品目入れているのですが、珍しい野菜、初めて見る野菜が1つでも入っているとワクワクしませんか? 毎回そんなワクワク感を楽しんでほしいというのもあって、畑には常時10品目はあるように調整しながら栽培しています」

 直接配達し、直接野菜を手渡し、感想を聞くことができるのが大きな遣り甲斐につながっていると中塚さんは言う。「やはり、おいしかったと言っていただけるのが何よりうれしいですね。大きな励みになっています」

 昨年からは援農ボランティアも受け入れ始めた。草引きやその時期に必要な作業にかかわってもらっているという。「土に触れたいという人や農業に興味があるという初心者の人などに助けて頂きながら、楽しく参加してもらっています。農業のすそ野を広げることにつながればうれしい」

 住宅地に近く、新鮮な野菜を直接届けられるのが、大阪農業の魅力だと話す中塚さんご夫妻。「規模を大きくしたいとか、そんな高望みはしていなくて、家族が食べていけたらいいというぐらいの気持ちでやっています。でも、とびきりの野菜を作れる、地域のオンリーワンの農家でありたい。そう思って、毎日畑に出ているんです」 

(ライター  松岡理絵)

 

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